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▽
「大丈夫か!?」
走り寄ってきたスズリに、握った大型ナイフを見せた。
「おう、無事だ!」
敗北を覚悟したあの瞬間。ゴム化して金属光沢を失っていたはずの刃に、一本本物の刃が混じっていることに気づいた。
防御対象をその一本に絞り、両の掌で挟み止めた。
「オレの能力は意識も加速するからな!混じった本物を見つけるなんて余裕だぜ!」
そう笑ったオレに、スズリはただ頭を下げた。
「すまない、俺の不注意だ。危うく君を傷つけるところだった」
「気にすんな!それより強いな!さっきの攻撃、何もできなかった!」
興奮してそう返すが、顔を上げたスズリは辛そうな顔をしていた。
「すまない。俺の能力は、すぐ人を傷つける」
「え、ああ〈言葉のナイフ〉だったよな?」
「......キャスターの能力は、その人を表したものになるんだ」
そう言ったスズリは、手に一本のナイフを生み出した。
「ナタリアは、自分の言葉が理解されない辛さから〈言語の壁〉という能力が生まれた。俺は......」
一度言葉を止める。
「俺は言葉でたくさんの人を傷つけた。その罰で、この能力が生まれたんだ。気を抜けば、言葉がナイフになって人を傷つける、こんな能力が」
ナイフが霧散する。空になった手を握りしめ、吐き捨てる様にそう言った。
「その力が、嫌いなのか?」
「嫌いさ。俺は、この力で大事な人を傷つけた」
▽
そう言った時、スズリは自分が能力に目覚めた日のことを、断片的に、悔罪的に思い出していた。
怒鳴る母。
唇を噛む、小さな自分。
思わず声を荒げ言い返した。
自分でも驚く程に、冷たく鋭い言葉が出た。
驚愕と、それを上回る悲痛に顔を歪めた母を見た。
同時、生成射出された〈言葉のナイフ〉が、母の頬を深く切り裂いた。
崩れ落ちる母。
眼前の事実を理解できず、ただ立ち尽くす子供。
▽
「この力を使ってキャンサーを倒す。それが俺の贖罪、罪滅ぼしなんだ」
オレは、なんとなくだが理解した。
昨日の戦闘で「楽しそうだな」とスズリが吐いた意味。
──何があったかは知らない。でも、きっとこいつは『自分がした事を償うため』、ただ機械の様にキャンサーと戦っていたんだ。
「それ以外に意味は要らない。この力が、『世界を守る為の物』でなかったら、この力は何の為にあるんだ」
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