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「お前の〈言葉のナイフ〉がどれだけ鋭いのかは知らない。でも、」
オレは、握っていた大型ナイフを逆手に持ち、思い切り自分の胸に振り下ろした
「何をするやめろ!!」
スズリが叫ぶがもう遅い。ナイフは吸い込まれるように胸に疾り、刃先がアーマーに当たると同時、
まるで脆いガラス細工のように、細かに砕け散った。
「......ど、どうして」
呆然と、霧散し消えるナイフを見ながらスズリは呟いた。
「お前、『僕は人を傷つけたくない』って泣いてる奴の〈言葉のナイフ〉が、本当に刺さると思ってんのか?」
ハッと、スズリがオレの目を見た。
「『死ね』って言われようが、何を言われようが、『そんなこと言いたくない』って思うことを理解してあげていたら、そうして悩んでいると知っていたら、言葉のナイフで傷つきゃしねぇよ!」
スズリは、じっとオレの目を見つめる。オレはそれを逸らさず、真っ向から受け止める。
「だから自分を刺すなよスズリ。少なくとも本部の人達はみんな、お前のことちゃんとわかってくれてると思うぜ」
ニッと笑う。
「......そうか」
「そうか」とスズリは小さく、噛みしめるように何度も繰り返した。
「怖いな」
暫くの後、スズリは、頭を書きながら言った。
「ずっと、誰も傷つけないように生きてきた。いろんな人を傷つけたからだ。それを、『お前の言葉じゃ傷つかない』なんて。......誰がそう思ってくれて、誰がそう思ってくれてなくて、そんなことわからない中、思ったことを話せなんて」
「別にみんなにそうしろってわけじゃないよ。ただ、お前が自分を刺さなくても、心の底から話せる相手を見つけようぜ」
「手始めに俺なんかどうだ?」 と差し伸べる手。
きっとスズリは不器用なのだ。いや、恐怖後悔故に不器用になったのだ。
傷つけないように傷つけないようにと、ひたすらに自分をセーブし続けた。
丁度いいセーブが彼にはできなかったのだろう。
今、俺の手を優しく握り、やってみるよと頷いたスズリが口を開く。
「ったくしゃあねぇな。今日の所はテメェに乗せられてやるよ新米!」
──うっわ口悪っる。
想像以上の口の悪さに、不器用さに、俺は思わず笑ってしまった。
「あぁん!?何笑ってんだテメェこら!?」
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