第3話

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「いや、ごめん、くっ......。だって、もう、くくっ、不器用っていうか、越えて馬鹿なんじゃ」 「もういっぺん言えやゴラァ!!」 「うひゃひゃ!待って、待ってうひゃひゃ!」 まったく。まだ、『気持ちをそのまま伝える』ということと『悪いこと』が切り離されていない。 「口調まで変えなくていいんだぞ?な?」 腹を抱えて笑っていると、「くっ、『丁度いい』がわからない」と、スズリは恥ずかしそうに俯いた。 ▽ 「さて、行くか」 オレはスズリにそう声をかける。 「どこに行くんだ?」 胸のあたりを弄り、アーマーを分離(パージ)、スーツケース状に戻したスズリが言った。 「ナタリアちゃんのところだよ」 「ナタリアの......?」 訝しむスズリに、オレはニッと笑った。 「伝えに行こうぜ。言いたいこと」 ▽ ナタリアが引きこもる部屋。正確には、引きこもる立方体がある部屋。 壁をノックし、反応を待つ。 すると、ゴゴゴと音を立てながら壁が沈んで行く。 中から顔を覗かせた彼女は、オレの顔を見て薄く笑い、その後ろのスズリを見て少し驚いた顔をした。 「スーちゃん......」 名を呼ばれ、気まずそうに視線を逸らしたスズリ。 しかしもう一度顔を上げ、ナタリアの紅い目を正面から見据えると、ゆっくりと口を開── ▽ ──『迷惑だから早く出てきて』『いつまで仕事サボる気だよ』『閉じこもって何になるんだよ』 冷たい、尖った言葉を言う自分が頭の中に浮かぶ。 怖い。 あの時、母さんを傷つけたあの時。俺の口から、俺が言おうとしたことではない言葉が出てきた。 言葉というのは、難しい。心とチグハグなことがある。 どうかこの気持ち、ちゃんとナタリアに届くように。 「ナタリア。......寂しい。また一緒に、遊ぼう」 ──恥っず!!! ボッと顔から火を吹いたスズリは、自分の口から溢れた言葉を頭の中で繰り返す。 ──恥ずかしいっ!結局こんな短いことなのか、言いたいこと!やっぱり何もナタリアのことを考えてないじゃないか!自分のわがままを言って終わった!優しい言葉をかけたかった! ──だが、コレが本心か。 吐いてしまっても、違和感がない。嘘じゃない。痛くない。 出た言葉はナイフではなかった。恥ずかしいけれど、人を傷つける言葉ではなかった。 なんだ。もう、大丈夫か。 あの日、もう誰も絶対に傷つけまいと誓った。
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