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カフェに着き、店に入ると、カウンターがよく見える窓側の席を場所取る。 カウンター内のスタッフを見るには、近すぎず遠すぎずの特等席だ。 財布だけを手に、カウンターへ注文しに行くと、今日のレジがケイタだと気づいた。 「お疲れさま」 「お疲れさまです」 「今日は二人なんだ」 「いえ、俺はあと一時間弱ですよ」 「じゃあ店長か」 少しだけ話すと、「アイスコーヒーを」と注文した。 長々話すと、他のお客さんからのクレームとサクが怖い。 「お待たせ致しました。アイスコーヒーになります」 「ありがとう」 「リエさん、ゆっくりしていくんだったら一緒に帰りますよ」 サクには聞こえないように、小声で言うケイタ。 「時間が合えばね」と同じく小声で返答した。 きっとケイタが帰る時間は、私もほど良い時間になることはお互いわかっていたけど、このやり取りが定番になってきた。 バッグを置いている席まで戻ると、何気なく外を眺める。 ストローを袋から出すと、小さな氷が浮かぶアイスコーヒーの中に突き刺した。 毎日必ずサクの顔を見たい私は休みの日さえこうやって店に行くのに、サクは「いらっしゃいませ」と言ったっきり、一度も私を見てない…と思う。 サクはそういうヤツだ。 仕事している時に一切私情を持ち込まない。 もう慣れたはずなのに、毎回悔しい思いをするのはどこかで私を見てほしいと望んでいるからだろうか。 グルグルとストローを回し、冷たさと濃さを均等にする。 一口飲みながら、チラッとカウンターを見れば、ケイタと目が合った。 爽やかな笑顔を向けるケイタからすぐに目をそらして、外に目をやる。 サクにしてほしいことをだんだんケイタにされている気がする。 そして、それを受けて心の隙間が埋まっていっていると感じる私。 嫌な女だ。 男なら誰でもいいんだろうか。 ため息をつくと、また一口アイスコーヒーを飲んだ。
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