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一人残されたロッカー室で「言うの遅いよ、メグミさん」と呟くと、力がスッと抜けた。 あんな話くらい…と思っていても、やはり気にはかかる。 サクの顔を見ると、複雑な気分になった。 「ううん、何でもない。ありがと」 我に返った私はわずか数秒の間を活かして、サクに笑顔を作り見せた。 サクに言うわけない、言えるわけもない。 言ったところで何か変わるわけもない。 ため息が聞こえてくる。 そうしたいのは私の方だ。 それなのに、なんでサクがため息つくんだろう。 「嘘ばっかり」 ため息の後に、そう言うと私の手をギュッと力込めて握る。 「話して?」 優しくしないで。 余計に辛くなる。 私までその子のようにサクとユイさんとの間の通過点じゃないかって思える。 私はその子とも今までの子とも違うから大丈夫だって、ユイさんにもいずれ勝つんだって、思いたいのに…。 自信もなきゃ、勝つ気さえしない。 浮気相手なんて、心が強くなきゃやっていけないことを承知しているのに…。 弱っている時の優しさは酷だ。 「だから、何にもないって。あっ、もう今日はここまででいいから。ユイさん今日早番だったんでしょ?もう帰らないと」 サクの手を振りほどこうとしているのに、ビクともしない。 「ユイは今関係ない。話してくれるまで離さないから」 なんで、放っといてくれないの? 我慢できなくなる。 瞬時にして流れる涙。 サクはその涙を拭うと 、私をそっと抱き寄せた。 咄嗟に抱きしめられることを嫌がった私を無視して、涙はサクの胸元を濡らした。
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