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いつものように送ってもらう為に、私がサクの前を行き、サクが私の後ろからついて行きながら帰っていた。
サクはヒールを履く私より小さくなることを気にしてか、人通りが多い場所では隣に並んで歩くことはなく、私より一歩引いて歩く。
私からすればおかしな光景だが、話をすることもなかった為、傍から見ればただの他人にしか見えない。
しかし、今日だけは違い、突然歩みを止められた。
「リエ」
「ん?どうしたの?」
私達の帰り道は重要なコト以外に会話なんてほとんどなく、まさか声をかけられて、立ち止まることになるなんて想像もつかないことだった。
「リエ、今から家に来ない?」
「…行かない」
何を言い出すかと思えば、頭がおかしくなったんだろうか。
なんで私がサクとユイさんの家に行かなきゃいけないの?
そもそもユイさんが待っている家に行って、修羅場にでもなれっていうの?
サクを振り切り、また先を歩き出す。
「お願い!行こうよ。寂しいじゃん」
「ユイさんがいるでしょ?とうとうおかしくなっちゃった?」
サクは見た目、バカに見えるけど頭は良いと思う。
「ユイさ、いないんだ。最近いないでしょ、バイト先にも」
「え?あー、言われてみれば確かに」
カフェに来ているか来ていないかは元々会う機会が少ないからわからないけれど、一ヵ月分のシフト表には名前がなかった気がする。
ユイさんを意識したくないから、いつも見たような見てないような感覚だけ残る。
けれど、今月のシフト表には確かにユイさんの名前がなかったかもしれない。
「実家に帰ってるんだよね」
「一ヶ月以上?」
シフト表に名前がないということは事前に店長に申し出ていたということだ。
実家に帰るのはわかるけれど、そんな長期間仕事を休めるのだろうか。
私とサクはアルバイトだけど、ユイさんは正社員だ。
病気とかでもないのに、長く休めるはずがない。
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