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「うん…。ユイ、帰ってくるかな」
「何も聞いてないの?」
「うん…」
寂しそうに彼女の心配をするサクは、バカなのかもしれない。
私にこんな話をするなんて…。
「帰ってくるでしょ。これだけ一緒にいるんだから、黙って出て行かないよ」
「んー、でもさ…」と言いながら、私を抱きしめる。
ずっと一緒にいる相手がいないものだから、人肌恋しいといったところだろう。
だからといって、家になんか行けるわけがない。
二人の生活感が見える場所に足を踏み入れれば、致命傷を負う。
サクの頭を軽く撫でなると、身体を離す。
一瞬でも、行っていいかな?と、考えてしまうから。
サクに何も言わずまた背を向け、歩き出そうとしたが足は前に進まず、後退した。
離れて行く私の手をサクがガッチリ掴んだのだ。
「寂しいのはしょうがないでしょ?私なんて毎日一人だよ」と慰める。
「最初からと状況が違うし」と反論を受け「そんな言い訳…離してくれないと人呼ぶよ?」と強がりを言ってみる。
すると、今度は逃がさないように力を込めて、再び私を抱きしめる。
「リエの格好がいけないんだよ」
「いつもと何ら変わらないけど?」
「じゃあ、風が悪い」
「一応聞くけど、なんで?」
「スカートがふわふわして見えるか見えないか、すっげーギリギリだから!」
今更、そんなので嬉しいんだ。
全部見てるくせに。
正直に口に出すそこがカワイイところだけれど。
「わかった。見せるから帰っていい?」
「見せられたら脱がしたくなるもん」
「わがまま」
私の言葉に返答はなく、拗ねたのか、無言になったサク。
だけど、立ち直りが早いことは予測済み。
次はどんな作戦に出るのか。もちろんサクは強行突破する。
そして、サクを拒否できない私は、サクからの深いキスという強行突破を受け止める。
「家、来るよね?」とすかさず言う、サクは確信犯だ。
私が諦めるように頷くと、サクはニッコリして手を握り、私の家とは逆方向に歩き出した。
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