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サクに連れられ、家路につく間何度もキスをされ、気分が高まっていた。
そして、家に着くなり、玄関先で貪り合った。
息も絶え絶え、絡み合う中、サクは火照る私の身体を抱え、布団へと運んだ。
意識がフワフワとしている私にこの時、考える余地はなかった。
普段独占欲は見せない私だけれど、この時ばかりは自分にセーブをしない。
甘えることだって許されるんだって思っている。
でも、たくさん名前を呼んでほしいって素直には言えないから、自分からいっぱい口に出す。
人に何かして欲しい時、まずは自分からって言われているのは、本当だと思うから。
「ユイ…」
それなのに、いつも絶対間違えないサクは私に向かってそう言った。
あんなに熱を帯びていた私の身体が、途端に冷めていくのを感じた。
しばらく頭も身体もダルくて動けず、さっきの言葉が何度もこだました。
まんまと自ら致命傷を負うことになった。
その愛しい声でサクは私の名前を呼んでくれるはずだった。
リエ、って。
今まで名前を呼び間違えることがなかったのは奇跡に近いことだってわかっていても、実際は受け止めることが私にはできないんだってことを知らしめた。
ずっと泣くことで気持ちを整理してきたけれど、このことを泣くことでなかったことにできるのか、って。
ケイタが近寄るようになって誰かがそばにいることに慣れてきた私は、弱い。
下半身に違和感が残っている。
と共に、自覚する。
サクはユイさんを愛している。
そして、私はあくまで二番目。
少し期待していた 。
私と出会ってから、ユイさんとは一緒に寝てないんじゃないか、って。
落ち込んで、落ち込みすぎて瀕死状態の私は、その身体に鞭打って、散乱した下着やら、服やらをどうにか身に着けていった。
着替える私の背後からは「泊まって行きなよ」と確かに聞こえた。
最後の一撃になりうる言葉を発したのは、もちろんサクだった。
私はできる限り、優しい言葉でそれを断ると、逃げるようにサクとユイさんの家を飛び出した。
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