7-2

3/7
前へ
/64ページ
次へ
偶然にも振り出した深夜の雨。 傘なんて持っているわけもなく、びしょ濡れになって家までやっとの思いで辿り着いた。 ドラマでよく見る悲劇のヒロインの気持ちが今なら少しわかるかもしれない。 自分の部屋の前で、濡れた手を拭く。 幸い、大事に抱えていたバッグの中までは濡れておらず、タオルは助かっていた。 スマホも無事で、ふと時刻が目に入る。 深夜三時。 いつも、夜道は危ないから、と言って送ってくれるサクは、こんな時間にすんなり一人で帰らせた。 送ると言われたところで、サクとあれ以上一緒にいるには辛いけれど、いつもの言葉がなかったのは今の私に更なる大きなダメージだ。 髪から顔へ、止めどなく流れてくる雨水。 水も滴る程度なら色っぽいけれど、人の前に出られないくらいずぶ濡れ。 化粧は見るに耐えられない状態になっていると思う。 きっと天が私の目に余る汚さに驚いて、きっと洗い流してくれているんだろう。 着ている服が貼り付いて重くなってきた。 身震いすると、バッグの中をあさり、鍵を探す。 早く温まらないと大変なことになる。 風邪をひいて熱でも出たりすると、学校にも行けなくなるし、アルバイト先にも迷惑がかかる。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加