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『もしもし?』
「ケイタ、ごめん。私鍵なくしちゃって、今ケイタん家の前なんだけど泊めてくれないかな?」
『…それ本気で言ってるんですか?』
「うん、本気。雨に当たって、このままだと風邪ひく。明日大学とバイト行けなくなったら困るの」
『それ先に言って下さいよ。ちょっと待って』とケイタは言い、電話が切れた。
内側の鍵が開く音とチェーンの外れた音がすると、勢い良く扉は開き、トレーナー姿のラフな格好でケイタが出迎えた。
「うわっ、見事に濡れてますね。当たるどころじゃないじゃないですか。雨降ってるの知らなかった」
「運悪く降ってきちゃってさ」
「とにかく中に入って」
「ありがとう」
濡れた私の背中を一押しすると、ケイタは迷惑な顔一つせず部屋の中に入れてくれた。
「ごめんね。こんな遅くに」
「気にする前にシャワー浴びましょう」
「ありがとう。借りるね」
「すぐ用意してくるから、ちょっと待って」
ベランダをつたって部屋に、と思ったけれど、戸締りはきちんとしているからベランダからも入れない。
管理人さんもこんな時間に起こすなんて気が引けてできない。
かといって、このまま朝まで外にいたら風邪ひくどころで済まされないかもしれない。
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