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「ううん、ケイタのことが好きって気付いたの。サクのこともまだ好きだけど、ケイタのことも好き。それなら、ユイさんを追いかけるサクより私を見てくれるケイタがいい。これからもっと好きになれる、と思う」
言葉が詰まらないように気をつけながら伝える。
この気持ちは全部が全部ウソじゃない。
ウソで固められたようだけど、願望からの言葉かもしれない。
「それならそれ以上好きになれなきゃ俺のところ戻ってくるんだ」
背筋が凍るような冷たい声と瞳。言い放ったサクの顔が見えなくなる。
ショーツがずり下ろされる。
「俺と目の前でやっちゃえば、コイツとも終わりだね」
再び金属音が聞こえてくる。
「ヤダ!サクやめて!」
暴れたって敵う相手じゃない。
それでも抵抗しながら、視界に入ってきたのは立ちすくむケイタだった。
目を瞑り押さえきれない涙にもうグショグショになりながら抵抗をやめた瞬間、大きな音と全身に温もりとが響いた。
「すみません、またリエさんに泣き笑いさせるとこだった」
優しい言葉が流れ込んで、更にしゃくりあげながらもう何も言えず、ただただケイタに抱きついた。
しがみつくようにしっかりと腕を巻きつけて。大きな音の正体はサクが私の上から床へ落ちた音だった。
「リエは渡さない」
ケイタに殴りかかろうとするサクが見えた。
ケイタを真横に突き飛ばし、殴られるなら私じゃないといけないと唇を噛み締めた。
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