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「美味い」
「そ?お口に合ったようで良かった」
箸のすすむケイタを見て、安心するともくもくとご飯を食べる。
久しぶりにご飯をまともに食べた気がする。
「あの、」
沈黙になる前にケイタが口を開く。
「うん」
「サクさんとはもういいんですか?いや、こういうふうに聞くのは嫌なんだけど」
ケイタの言いたいことはわかる。
この呆気ない感じが妙にするのは。
私が思うぐらいだから、ケイタは更に感じているはすだ。
バカみたいに真剣に悩んで、苦しんだ結果がこれだから。
半分以上一緒に見てきたケイタにとって納得いかない部分もあると思う。
でも、これだけははっきり言える。
「うん、もうちゃんとやめる。続かないことは最初から分かってたんだよ、どこかで。それにお互い、もう気持ちがないと思う。でも、なかったことにはできないから」
サクは自分で自分を止められなかっただけだと思う。
今はきっと後悔している、なんて都合いいのかもしれない。
けれど、ユイさんが会いにきたということはそれだけでもサクの気持ちは落ち着いたと思う。
結局サクはユイさんだけをずっと愛していたんだ。
「ご心配ばっかりかけてごめんね。そして、ありがとう」
「いいえ。どういたしまして」
簡単に思い出にかえられたらいいのに、って思うけど、もしそうなったら私がサクと過ごした日々は意味のないものになる。
"好き"じゃなくて"愛"を求めた相手―。
手に入る、入らないってことだけをずっと考えてきた。
これから先、また同じようなことで悩むのかもしれない。
お互いフリーだったとしても。
けれど、それは違うって少しずつ気付き始めた自分がいる。
愛って、そういうものじゃない。
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