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「久しぶり。元気にしてましたか?」
玄関の扉が開き、私を見ても、まるで何事もなかったかのようにケイタは私を招き入れた。
久しぶりに会う友達がちゃんと約束を取りつけてきたかのような反応。
本来なら、ケイタは私に怒りをぶつけてもいいはずなのに。
サクとのことを心配してくれていたケイタに何の話もなく、私は引越しして、スマホの番号もアドレスも変えて、連絡さえ自らしなかったのだ。
それなのに 、この対応は何なんだろうか。
「適当に座って下さい」
今日の予定を聞いてから話そうと思っていたのに、簡単に家に上がってしまった。
けれど、ケイタの服装からいっても、今から出掛ける用事はなさそうだ。
「今日、なにか出掛ける用事とかないの?」
「ないですよ。暇してました。バイトも休みだし」
「そっか」
「で、話ありますよね?」
ありますか?、とは言わない。
ありますよね?、というハッキリ断定した言い方。
無表情のまま、私を見つめるケイタは怖い。
自分がした当然の結果ではあるけれど、言葉に詰まる。
よくまとまってはいないけど、そこは大目に見てもらうことにしよう。
話に時間の掛かった私を、ケイタは捲くし立てることもなく、黙って聞いてくれた。
ようやく一息入れると、大きく吐き出した。
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