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「俺は曾祖父さんから勇者の資格を相続した。若い頃は再び訪れると予言された世界の危機に備えて、向こうの世界で必死に経験値を積み、力を蓄えた。けどな、遂に世界の危機は現れなかった。俺は真の勇者としての務めは果たさぬまま、向こうの世界を後にし、こっちの世界でばあさんと一緒になった。」
この後関係のないばあさんとのロマンスストーリーが長々と展開されたので、割愛。
「そうしてお前の母さんが生まれ、お前が生まれた。」
ロマンスを語り終え満足げな息を吐きながらなおも話が止まらないじいちゃんの話を、俺はもうほとんど聞き流していて聞いていなかった。
「俺もそんなこっちでの幸せな生活に、暫く向こうの世界にいずれ訪れる危機、など忘れて暮らしてた。でもな、お前がこの家に来て、その泣きボクロを見た時に、予言を思い出した。」
「予言?へえ。」
俺はほとんど生返事だ。あくびをかみ殺すのが大変なくらいだった。
「向こうの世界にいる予言者の予言だ。それによると、世界の危機は必ず訪れる。だが、それは俺の役目ではないと。その役目を担うのは、俺の子孫で、泣きボクロがある男の子だ。」
欠伸をする俺をまっすぐに見つめ、じいちゃんは断言した。
「だからお前が予言の救世主、勇者としての役目を果たす者だ。」
一度口を噤み、話を切ったじいちゃんは、着物の胸元からA4サイズを半分にしたくらいの、和紙で出来た紙切れみたいなのを取り出して得意げに俺に差し出す。
「お前の為に物置から引っ張り出してきた。持っておいた方が役に立つ。」
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