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どうしよう。話を合わせるべきだろうか?それとも適当に受け流して逃げるか。
よし、決めた。逃げよう。逃げて母さんに任せよう。
「あ、ごめん、じいちゃん。俺ちょっと用事思い出したわ。また帰って来てから聞くから。」
「おい、待て健。ここからが大事な話なんだ、座りなさい。」
我ながらへたくそな言い訳添えてそそくさと立ち上がる。成人会であれだけ呑んだというのに、不思議と頭も体もすっきりしていて、着慣れない袴姿だというのにすんなりと立ち上がれた。俺はほとんどじいちゃんの顔を見ることもなく、まだ何か言いたげなじいちゃんに背を向けて襖の取っ手に手をかけた。
背後ではじいちゃんが慌てて俺を引き留めようと立ち上がる音が聞こえたので俺は足早に廊下へと足を踏み出した。
だけど次の瞬間、廊下だと思って俺が踏んだそこに、廊下はなく、もっと言うならば地面さえなかった。
バランスを崩し驚いて下を見ると、そこは青空だった。
風がびゅうびゅう吹く雲が流れる空。遠くに小さく地面や緑や家らしきものが見える。まるでスカイダイビング、思った瞬間、俺は背中から思い切り押され、その空に真っ逆様。
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