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どこまで落ちるのかもわからない。
どれだけの間落ちていたのかもわからなかった。
ただ、ずっと叫んでいたと思う。空中での姿勢も知らない俺は風に良いように揺さぶられ、ただ為す術もなく隕石のようにスピードを増して落下していく。
どこかで死の覚悟をした。人生が走馬燈のように蘇るのは本当なのだなと思った。
色々思い出した。たぶん、一瞬だったのだろうけど、幼稚園の頃に好きだった子に転ぶところを見られたときの恥ずかしさ、小さいときには嫌いだったナスが高校の時に食べれるようになった時のちょっとした嬉しさ。俺の野菜だからだ、と喜ぶじいちゃんの顔。
今の状況には関係ないものばかりだった。
そして最後に、やっぱりじいちゃんの顔だ。
「お前は勇者の末裔だ。」
その言葉を思い出した刹那、落下を続ける俺の体を何かが掴んで落下を止めた。
「よし!良いぞレイダ!そのまま落とすなよ!」
声が聞こえた。落下を止められる衝撃に吐き気がして呻く。
腹に何かが巻き付いているのが分かったのは、少し後だ。
気が遠のくのを堪えて、薄く目を開く。
まだ俺の体は雲の上だった。腹にロープか何かを巻き付けられ、つるされているようだった。
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