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良い、皆まで言うな。何も聞きたくない。某佐藤健とは似ても似付かないし、病院とかいくと窓口の奥の人が名前に反応し、わざわざ身を乗り出してまで顔を確認しにくるのとか慣れてる。
その時のちょっと残念そうな笑顔とかも慣れてる。
それについては涙なしでは語れない体験談が多々あって、酒の肴にはちょうど良いが、今は関係ないので割愛させてもらう。
その話はまた、次の機会に。
話を戻す。
俺の孫が勇者の子孫宣言が行われたのは、俺が引っ越してきて、村のアイドルにまで上り詰めた直後である。
それはある日突然であった。
正確な日時の記憶はないが、確か鈴虫が鳴き始めた九月半ば頃の早朝。
「やっぱりそうだったかたける!」
とのじいちゃんの叫び声と共に俺はいきなり抱き起こされてめちゃくちゃ怖かった記憶がある。
俺は何も訳が分からず、何よりも幼い俺はじいちゃんの突然の狂言が怖くて、ただ頷くことしかできなかった。
「やっぱりお前はそうだったんだな。お前は家の家宝だ。」
そう言ってじいちゃんは俺を公民館まで連れていき、そこにたむろする老人仲間に声高々に勇者の帰還を宣言した。
その時のじいちゃんを見る他の公民館の老人たちの目は今でも覚えてる。
「まあ、佐藤さんもいよいよかねぇ。」
「うちのじいさんも死ぬまでの一年やそこらはあんなだったわ。」
「酒も煙草もやらんまじめな人だったのになぁ。」
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