はじまり。

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じいちゃんがトイレに立った後、大体このような会話をしていたと思う。 そのとき俺はまだ子供だったが、子供なりにじいちゃんをフォローしようと、その老人たちにじいちゃんに連れられて公園にいった話や、じいちゃんの畑の野菜がどれだけ美味しいかといった話をした。 たぶん子供なりにじいちゃんがどんなに良い人か、をその老人たちに知ってもらおうと思ったのだろう。 我ながら涙ぐましい気遣いである。 けれど俺の努力も虚しく、じいちゃんはその公民館の宣言以降、近所に俺が勇者の子孫であって、世界の救世主であると触れ廻った。 たけるは勇者の末裔なのだ、有り難い存在なのだ、と。 無論潮が引くように俺の周りにいた老人たちは居なくなった。 歩けども歩けどももう誰も俺に寒天もふがしもくれなくなった。 それでも、じいちゃんはやめなかった。 お前はいつか先祖のように勇敢になる。 なんたって勇者の末裔だからだ。 何度も何度も繰り返した。俺が高校二年になるまで。 俺が勇者の末裔、だという根拠はどこにあるのだ、と一度聞いてみたことがある。 だが返答はこうだ。 来るべき時が来たら教える。 俺は心の中でじいちゃんを鼻で笑った。 漫画かよ、と。 来るべき時、がいつなのかはもう聞かなかった。     
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