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俺が勇者たる根拠を聞いた後、じいちゃんは不思議なほど俺に勇者の子孫だのなんだのと言わなくなった。
本当に不思議なほどぴったりと。
俺はそれを深くは考えなかった。孫可愛さに勇者の末裔等とふれ回ったが、みんなに相手にされなくなったのでほら吹きをやめた。程度にしか考えなかったし、俺はその頃、学校の流行や、女や、部活動、女に夢中になり、次第に自分が勇者の末裔だというじいちゃんの狂言自体、忘れた平穏で普通な学生生活を送った。
本当に今思えば恥ずかしい思い出ばかりであるが、掛け替えのない楽しい思い出である。
誰しも、学生時代の思い出とは黒歴史と共にある、そんなもんだろう。寧ろ、黒歴史はスパイスともいえる。
人とは誰しも黒歴史という踏み台をバネにして、人生という跳び箱を飛ぶのだ。
となると、黒歴史が強烈なものならばそれだけ高い跳び箱に挑戦できるということになるが、俺の黒歴史とは至って平均並だ。
赤裸々にここに記するとするならば、クラスで好きな子のSNSを軒並み毎日欠かさずチェックし、彼女の前ではひょうきんなちょい悪を演じた。
彼女に聞こえるように「休日はピアスばりばりつけてる。」アピールを良くしていた。
ピアッサーでへっぴり腰であけたたった一つのピアス穴だけを糧に。
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