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土間に袴のままへたり込んで急激な眠気に襲われる俺の頬を、じいちゃんの土のにおいがする分厚い手が叩く。
頬に何度か弾くような痛みが走った気がするが、何せへべれけで痛覚なんか火照った体に鈍く響くだけで、目を完全にさますに至らず、ただ俺は今日のじいちゃんめんどくせぇなあ。くらいに思ってあしらうようなことを何回か口走ったと思う。どれもじいちゃんの耳に言葉としてちゃんと届いたかどうかはわからないが、じいちゃんはそれでもやめなかった。
しつこく俺の頬をジンジンするくらい叩き、俺の閉じた瞼をこじ開け、年寄りでもない新成人の俺の耳元で大声を浴びせた。
それでも俺が立たないもんだから、しびれを切らしたじいちゃんは年甲斐もなく俺の両脇に両手を突っ込み、中腰になり、180cmほどある俺を抱き起こそうとしてくる。
それに俺は子供のようにぐずってじいちゃんをふりほどこうとしてみたり、たこのようにじいちゃんに甘えて絡みついたりする。
「こら、おい!ちゃんと!ちゃんと立て!じいちゃんつぶれるぞ!」
じいちゃんの怒号が響く中、俺は睡魔の心地良い脱力感に負け、意識を落とした。
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