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「……しっこ…もれる」
無意識に口にでていた。酒の利尿作用が猛威を奮ったおかげで、俺の膀胱は今にも弾け飛びそうになっていた。
重たい体を仰向けから何とかうつ伏せに寝返り打ち、這いずって便所を目指す。
ああ、腹這いはまずかった。息子と膀胱が床に擦れて圧迫される。だが起きあがる力もなく、腹這いになってしまった以上、そのままトイレまでの道のりを耐えるしかない。これはもう膀胱の耐久力とかそういう問題ではない。気持ちの問題である。
ここで漏らさでおくべきか。と変な日本語を頭の中で繰り返し活としてつぶやきながら、やっと体の大半が敷き布団から畳へ進んだ時、俺が目指していた襖の奥からトイレの水音が聞こえ、勢いよく襖が開いた。
俺の腹這いの視点からは俺のとは違う真っ白な地によくわからんが綺麗な模様の刺繍細工が入った足袋が見えた。
その足袋だけでも由緒ある高価そうなにおいがした。
この家でそんな高価そうな足袋をはくのは誰だと見上げてみれば、
その足袋なんか目じゃないくらい高そうな着物を羽織って正装したじいちゃんが、頭にたんこぶを作って深刻な顔をしながらそこに立っていた。
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