プロローグ

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 ゴーグルの横についている再生ボタンをクリックしたが、耳にはめられたイヤホンからはお気に入りの00年代リミックスがかかることはない。その代わりに聞こえてきたのは、無機質な声にさらに冷たさが増した声だった。 『そう言って現場への遅刻をしたことが39回ある。40回目には記念としてレジスタンス本部にこれまでの遅刻の経緯をレポートとして提出することを提案』 「わかったわかったっ! 行けばいいんだろ行けばっ」 『すでにそのように報告済み。了承は一回でいい』 「はぁ....それじゃ行くか」  一歩前進。  今、彼が立っている場所はかつて多くの人間が観光として訪れた高層建築物の跡地、通称『東京スカイツリー』  現在地上から450メートルの位置で待機している状態である。  顔に当たる風がすでに心地いいを通り越して、痛い。 「なぁ、俺本当に高いところが苦手なんだけど」  ふと下を覗き込めば、以前東京と呼ばれていた場所も未来人の開拓によってその地形が大きく変化し、多くのアンドロイドや工業用ロボットなどが下で未来人がすみやすい新たな街づくりを行なっている。すでにスカイツリー並みの高層建築物が立ち並び、その様相はとても2048年とは思えない光景だ。  改めて、この時代の人間に生きる価値がないと言わんばかりの光景だと思い知らされる。  だが、それでも。 『残り1分』 「行くぞっ!」     
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