10 ブラッドリー視点

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「使者でなく、本人が行くのが(すじ)というものだろう。お前が追い返されたのはしかたがない。あちらに残っている者にも、ニコルの居場所を探させているところだから、あとは私がどうにかするよ。膝をついてでも詫びる。母上は別荘に幽閉したし、ニコルに会わないという誓約書にもサインさせた。故意に破ったら、刑罰を与えると脅してあるからもう大丈夫だろう」  ブラッドリーがユリアを殺そうとしたのが、かなり効いたらしい。ユリアは別人みたいに大人しくなって、編み物や刺繍をして、静かに過ごしているようだと監視の者から聞いている。 「実の母親にそこまでしないといけないなんてな」  オルヴァは苦虫をかみつぶした顔をして、ブラッドリーの肩を、気遣いを込めて優しく叩く。 「それでも、私がどうにかできることだから、まだ良かった」  ブラッドリーが当主だから采配(さいはい)できたのだ。そうでなかったら我慢するしかなく、さらに地獄だっただろう。  ブラッドリーはトランクを持つと、帽子を被って部屋を出る。  団員が玄関先に見送りに来た。 「団長、お方様と仲直りしてくださいね!」 「お体に気を付けて」 「こちらは任せてくださいね」  口々に声をかけてくる彼らに頷くと、ブラッドリーは箱型馬車に乗り込んだ。  続いて護衛兼従者として、魔法使いの青年が二人加わり、馬車が走りだす。 (まずはフェザーストン家だな)  ニコルに会いたくて気がはやるけれど、まずは嵐に飛び込まねばならない。
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