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11 その他、視点
曇天の薄暗い空は、今にも泣きだしそうだ。
冬の合間の暖かい日だと喜んだが、そんな日に雪が降れば、みぞれ混じりでほとんど雨と変わらない。
直撃すれば氷の粒が地味に痛いし、濡れれば体を冷やしやすい。
リッツフィールドからやって来た、ニコル捜索隊の男二人は空を見上げてため息をついた。
「そう広くもない領地なのに、見つからないものだな」
「木を隠すなら、森の中。土地勘のない俺らには難しいに決まってる」
灰色の馬の手綱を引いて城下町を歩きながら、他の方面に散った仲間と情報を共有するため、広場の前にある酒場に向かう。
少しの駄賃と引き換えに、馬丁に馬を預け、酒場へ入る。昼の遅い時間からあいている。人数はまばらだが、暖炉では火が燃えていて、外よりずっと暖かい。
「リッツフィールドより北にあるから、寒いな」
「ああ。他の奴はまだだな、体を温めようか」
相棒がグラスをあおるしぐさをして、もう一人がにやりと笑う。脱いだマントを椅子の背にかけ、店員に酒と軽食を注文する。
「農閑期に仕事をもらえたのはありがたいが、いったいなんだって奥方様は家出なさったんだ?」
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