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村人達は、少しだけ見たブラッドリーの姿と噂から、ブラッドリーに心酔している。あの神々しいほどに美しい魔法障壁は、とても人間技には思えなかった。魔法の使えない彼らには、神様のような畏怖すべき存在だったのだ。
その時、二人の前に、注文していない肉料理が置かれた。
「え?」
「こんなの、頼んでないぞ」
すると、近くの席にいた少年が親しげに微笑んで近づいてきた。
「僕からです。失礼ですが、お話が聞こえていて……。あなたがたもリッツフィールドから来たそうですね」
少年が人形のような顔立ちをしていたので、男達は息を飲んだ。
「え? ああ、あんたもかい?」
「ええ。僕も奥方様を探しているんです。なかなか見つからなくて。お互いにねぎらう意味をこめて、こちらをご馳走させてください」
「はあ、それは構わないが……。あんたみたいなのが、この隊にいたのは知らなかった」
夢から覚めた心地になると、男達は不審の目を向ける。少年は声をひそめた。
「僕は別の用があって、一人で調べているんですよ。実はブラッドリー様から、秘密裏の捜索を任されているのです」
「ご領主様から?」
そう問い返す男達の前で、少年のこはく色の目から涙が一筋こぼれ落ちた。
「ああ、かわいそうなブラッドリー様。あんな男にひどい目にあわされたのに、まだ助けようというんです。僕もつらくて」
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