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「連れ帰るにしたって、罰を与えたいんです。だから、お願いします。もし居場所を見つけたら、僕に教えてくれませんか? 僕がしっかり復讐して、それから話を付けますから」
懇願する少年に対し、男の一人は渋い顔をする。
「しかし、そんな復讐なんて……。それこそ領主様のお仕事だろう?」
「まあ、教えるくらいならいいじゃないか。性悪な嫁をしつけたって、感謝こそされても、文句を言う旦那はいねえだろ」
「はは。違いねえ」
もう一人の言葉に納得して、互いに笑う。
「報告のために、夜にはここで集まってるでしょう? 僕も待っていますから、よろしくお願いします」
少年が男の手に銀貨を握らせて微笑む。
「ああ、分かったよ」
「僕のことは内緒なので、魔法使いには言わないでください」
更に一枚、口止め料を追加すると、男達は口元を緩めた。農民である彼らにとって、銀貨一枚でも冬を越すのがかなり楽になる。約束をして、口を閉ざせば、それが二枚だ。二人で一枚ずつ分け合える。
「分かった」
「ご領主様のために、秘密を守る」
少年はちらつかせていた銀貨を渡して会釈をすると、酒場を出て行った。すれ違いで、魔法使いが部下とともに入ってきた。
酒場を少し離れた所で、エリアル・キャボットは冷めた目をした。
「馬鹿な奴ら。でも、ああいう連中がいると仕事しやすくて助かるね」
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