12ー13

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12ー13

 雪がやんだ午後、ニコルは帽子を被り、コートの上に作業用のエプロンを付け、レインとともに庭にいた。  ニコルがすることは特になく、単に野菜を見て回っているだけだ。  せめて何か作業をさせてあげようと思ったのか、レインがハーブを示した。 「ニコル様、タイムを()みましょう。朝、(せき)をされていたでしょう? 風邪の引き始めには、タイムのハーブティーでうがいです」 「ああ、そうだね」  子どもの頃は、魔力切れになると眠ってしまうせいで体力が無く、体調を崩しやすかった。咳をすると、レインがうがい薬だと言って、タイムのハーブティーを持ってきたものだ。  葉をいくつか摘んで、籠に入れる。  ついでに、夕飯で使うためのローズマリーも摘んだ。肉料理のくさみ消しだ。 「さ、今日の庭仕事は終わりですよ。中に入りましょう。俺も寒いんで」 「そうだね、そうしよう」  芯まで冷える寒さである。  ニコルは(はさみ)を籠に入れて立ち上がる。レインについて玄関のほうへ向かうと、男の声がした。 「お方様!」 「え?」     
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