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打算的に見ても、ブラッドリーは良い相手だ。一人息子なせいか、将来の責を負う自覚があり、表情は読めないが、相手を気遣う優しさはある。
「酒乱と暴力野郎じゃなければ、なんでもいいや」
「昨日のご様子だと、抱き潰されそうな気がしますけどねえ」
嫌なことを言うレインを見ると、思いのほか心配そうにしている。
「酒乱や暴力を振るうようなことがおありなら、ちゃんと教えてくださいね。恐れながら、ニコル様は俺にとっては弟みたいなものなんです。幸せになっていただかないと悲しいですよ」
ニコルが五歳、レインが十五歳の頃からの付き合いだ。幼い頃、ニコルはレインを兄ちゃんと呼んでいた。
「やっぱり俺、ニコル様についていこうかなぁ。親父には兄貴がいますし、ここなら庭や植物についての勉強もはかどりそうです。それにニコル様の味方が一人もいなかったら、ニコル様、眠ったまま動けなくて死んじゃいそうで怖いし」
「いや、さすがにそこまでは……」
ないと思うが、ちょっと自信がない。いじめられて無視でもされたら、ニコルの体質ではあっという間に弱ってしまう気はする。
「家族と相談しますね」
「……すまない」
「そういう時は違う言葉を聞きたいですね」
「うん、ありがとう」
ニコルがお礼を言うと、レインはにかりと歯を見せて笑った。
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