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 ニコルがようやく動けるようになったのは、翌日のことだった。  それでも筋肉痛のせいでぎこちない歩き方をしながら、アマースト侯爵にお目通り願うと、応接間に通された。  侯爵家の屋敷は、フェザーストン家の屋敷よりずっと大きく、応接間なんて特に煌びやかで目がチカチカする。  すでに侯爵と侯爵夫人が、応接用の長椅子に座っていた。  侯爵はブラッドリーとよく似ていて、くすんだ金髪と鋭い灰色の目を持っている。無愛想なところもそっくりだ。侯爵夫人は細身で美しいのだが、威厳溢れる雰囲気があって、まさに屋敷の女主人という厳しさを秘めていて、ニコルは少し萎縮した。苦手なタイプだ。 「ごあいさつが遅れまして大変申し訳ありません。フェザーストン伯爵家が次男、ニコル・フェザーストンです。お会いいただき光栄です、侯爵閣下、侯爵夫人」  胸に手を当ててお辞儀をすると、侯爵は座るようにと向かいを示す。  ニコルは膝丈まである灰色の上着を着て、白い帯で腰を締めている。細身のズボンも白く、革製の靴を履いていた。一応、見合いで着る予定だった一張羅(いっちょうら)だ。 「いや、こちらこそ申し訳ないことをした」  侯爵は声に嘆きをにじませて、口を開く。     
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