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「すまないな、ニコル君。お見合いのお試しだというのに、息子が暴走したようで」 「もうお加減はよろしいの?」  侯爵夫人の気遣いに、ニコルは頷く。 「はい。まだ少し筋肉痛が残っているのですが、いずれ治るかと」  どうか深く突っ込まないで欲しいと願いながら、ニコルがふらふらした動きをしている理由を告げた。  侯爵は気まずそうに咳払いをして、話を続ける。 「君が構わないなら、この縁談、進めようと思うのだが、どうかね?」 「その件ですが、我が父、フェザーストン伯爵よりお願いがございまして」  書類を差し出すと、侯爵はすぐに目を通した。 「なるほどな。氾濫が起きて、没落寸前だとは調べがついている。君は身一つで来てくれればそれでいいよ。支援もしよう。――だがね、ただ金を渡すより、根本的な解決をすべきではないかと思うのだよ」 「……とおっしゃいますと?」 「我が領が支援するのでな、共に治水事業をするのはどうだろうか。息子を名代(みょうだい)につけるから、結婚のあいさつがてら、オーガスト領に戻って伯爵と話し合って欲しい」  驚いたことに、侯爵の合図で、執事が書類を差し出す。  ニコルとブラッドリーの相性が良かった時点で、頼まれそうなことを推測し、もっといい改善案を用意してくれたようだ。     
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