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それが運命的なつながりのあるオメガならば、番になることで、魔力を安定させながらも魔力を更に増やすことができる。
そういうわけで、運命の番を得るのは、アルファにとっての夢だった。
だから肉体的に貧弱でも、嫁として送り出されるその日まで、オメガは大事に育てられる。
「旦那様、アマースト侯爵家より招待状が届きました」
そこへ、執事が銀盆に手紙をのせて運んできた。
「招待状?」
父はけげんそうにしながら、手紙を読む。
「これだっ」
そして、今までの瀕死のありさまが嘘みたいに、明るい顔で椅子を立つ。
「アマースト侯爵家が、長男の見合いのため、夜会を開くそうだ。オメガであるニコルに参加して欲しいそうだ。馬車に衣装代にと全て用意してくれるそうだぞ!」
「でも、ニコルはまだ……。あら、今日が誕生日ではないの。ごめんなさい、ニコル。誕生日おめでとう。あなたも立派な大人になったのね」
母がようやくニコルの誕生日を思い出して、申し訳なさそうに謝る。
「いいんです、お母様。お言葉だけで充分です」
「いいぞ! ニコルは体が弱いが、性格は良いからな。きっと気に入っていただける! あとはお試しでの相性次第か……。かの御子息は、魔力不安定症をわずらっておられるからなぁ」
父は思案げに呟いた。
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