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ニコルより十歳年上のレインは、よくできた従者だ。庭師の息子で、ニコルの世話をしていない時は庭仕事をしている。ニコルがぶっ倒れたり部屋に帰りつくまでに動けなくなったりすると、部屋まで抱えて運ぶのが主な仕事だ。休みさえすれば、ニコルは自分のことは自分でするので、レインにとっては給与に上乗せしてもらえるおいしい仕事みたいだ。
レインは従者として一通りのマナーを仕込まれているから、普段はあまり庭師らしさがない。だが、見慣れない植物を見かけると、急に庭師らしさを発揮して、興味を示して食いつくところがあった。
「あ、ニコル様、すごいですよ。魔法障壁がよく見えます。あれが魔法を繋ぎ合わせる塔ですか~」
窓から外を見ていたレインが愉快そうに騒ぐ。クッションに横たわっていたニコルは、興味を惹かれて身を起こした。
「わぁ」
窓の外には、光輝く魔法の壁があった。見事なレースのように、紋様が緻密にえがかれている。
ランス王国最南端、国境沿いにぽつぽつと建っている塔ごとに魔法障壁がつながれていて、天高くまでそびえていた。魔法障壁の向こうは、樹海と大きな山がある。魔物の中でもとりわけ強く、最も禍々しいといわれている竜の巣だ。
「壁公と呼ばれるのも納得だな」
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