第壱話 かつて伝説だった者達

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しかし、予想外の事は別のベクトルで起きた。 「久々の客人だ、ゆっくりしていけ」 そこには地上の楽園があった。澄み渡る青い大空、見渡す限りの緑草、ところどころにある七色の花、流れる透明な川のせせらぎ、心地よい風…その中央には白い木造の一軒家。 その庭にある椅子に腰かけ、優雅に紅茶らしきものを飲みながらこちらを見ずに、この楽園の主はそう言った。 『無垢の魔女ホワイティア』 かつて突如としてこの世界に現れ、魔界の門を強制的に開き世界を混沌の渦に巻き込んだ人物。人々から恐れられ恐怖の象徴となった通称『魔王』。 確かにそこにいたのは白いロングコートに身を包む背丈は160センチ程、体躯は少し細め、髪は綺麗なストレートでロングヘアー、右目だけを束になる黒髪で隠しており、その部分以外は光るような白さの白髪の女性。口元に皴はあるが、一見するとまだ20代ともとれる美しい姿。しかし、その出で立ちにはどこか妖艶さがあり『魔女』と呼ばれる所以はどことなくイメージできた。 だが、次に魔女が放った言葉はアレンの警戒心を吹き飛ばすのに充分だった。     
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