第一話 おととい来やがれ!

3/3
前へ
/5ページ
次へ
次の日、仕事から帰るとその男が玄関で待っていた。 俺の顔を見るなりそいつは泣きながらすがりついてきた。 「お願いします!どうか教えて下さい。 僕はなぜここに来なけりゃいけないんですか!」 少しかわいそうになってきたが、全く心当たりがない。 「いや、俺にもさっぱり分かんないんだよ。いいから帰れよ」 「戻れ無いんです。 お願いですから教えて下さい」 「何をだよ」 「だから、なぜ僕がここに来なけりゃいけないのかですよ」 幾ら考えても分からない。そもそも誰がここに来いって言ったんだ? そいつは泣いてばかりで話にならなかった。 仕方なくまた警察にお持ち帰り戴いた。 次の日、俺は夜明け前に起き出した。 奴が来る前に逃げ出そう。 今夜はビジネスホテルにでも泊まるか。 そんな事を考えながら玄関のドアを開けた。 「お願いします。教えて下さい」 「うわぁあああ、出たぁあああ!」 「お願いします。お願いですから」 「ひ、ひやぇあぉりゃあ」 「お願いします」 「知らねえよ!帰れ!」 「お願いします。お願いします」 「帰れぇえ!おととい来やがれ!」 「分かりました、そうします。 その時はお願いしますね」 男は怨めしそうに帰っていった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加