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次の日、仕事から帰るとその男が玄関で待っていた。
俺の顔を見るなりそいつは泣きながらすがりついてきた。
「お願いします!どうか教えて下さい。
僕はなぜここに来なけりゃいけないんですか!」
少しかわいそうになってきたが、全く心当たりがない。
「いや、俺にもさっぱり分かんないんだよ。いいから帰れよ」
「戻れ無いんです。
お願いですから教えて下さい」
「何をだよ」
「だから、なぜ僕がここに来なけりゃいけないのかですよ」
幾ら考えても分からない。そもそも誰がここに来いって言ったんだ?
そいつは泣いてばかりで話にならなかった。
仕方なくまた警察にお持ち帰り戴いた。
次の日、俺は夜明け前に起き出した。
奴が来る前に逃げ出そう。
今夜はビジネスホテルにでも泊まるか。
そんな事を考えながら玄関のドアを開けた。
「お願いします。教えて下さい」
「うわぁあああ、出たぁあああ!」
「お願いします。お願いですから」
「ひ、ひやぇあぉりゃあ」
「お願いします」
「知らねえよ!帰れ!」
「お願いします。お願いします」
「帰れぇえ!おととい来やがれ!」
「分かりました、そうします。
その時はお願いしますね」
男は怨めしそうに帰っていった。
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