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第二話 うぜぇ!
「やん『六感』じゃない!
これ前に観たぁ」
うぜぇ、俺はまだ観てねえんだ。
「でもこれ面白いのよ。
主人公が幽霊の視える男の子と事件を解決していくの」
知ってるよ、かなり前の映画だしな。
「早く観ようよ」
オレは無言でコンビニ弁当を広げビールを開けた。
「もぉ?!ご飯食べながらでも観れるでしょ!ね、ねーってば!」
うぜぇ、オレは映画は集中して観たいんだ。
「まだぁ、まだぁ!?ねえ早くぅー」
オレは黙って風呂場の給湯スイッチを押した。
「えー、お風呂なんて後でいいでしょ!
それより映画!」
あぁ、うぜぇ!
飯の準備も掃除もしねえくせに言う事だけは一人前、いや三人前だ。
オレは食い終わった弁当のカラと空缶を乱暴にゴミ袋に詰め袋を縛った。
「あ、燃えないゴミと缶は分別しなきゃダメなんだよ!
大家さんに言いつけちゃお」
出来やしないくせに。
「ふぃーー」
浴槽に身体を横たえると自然と声が出た。
このため息とも遠吠えともつかない発声は何なんだろ?
全身の疲れが溶け出していく。
十分に温まり汗をかいた後、オレは頭を洗った。
手桶で湯を掬い頭にかけ、シャンプーを泡立てる。
トニックシャンプーの刺激が心地良い。
ゾクリ。
背後に気配を感じた。
「いるのか!」
まさかな、そこまで非常識じゃない。
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