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私は高校時代、放送部に所属していて毎日昼休みと掃除の時間には放送を行っていた。4限目終了の鐘の音と同時に、一目散に2階にある職員室へと駆けて行き鍵を取って4階の放送室へと向かう。学年が変わるごとに自分の教室の階が変わったので、毎年その移動距離が変動していた。放送は4限が終了した10分後に始めなければならないため、自然と駆け足にならざるを得ない。それでも先生とすれ違ったら、放送部の鉄の掟として会釈をしてこんにちはと挨拶をしなければならない。また職員室に長蛇の列が出来ている場合は、先に職員室に入室して良いか様子を伺いながら入る。
色々な難関?を乗り越え、放送室へと入る。まずすることは配置の確認。ホワイトボードに役割、名前とマグネットが貼られているので、それを元に各々が配置に着く。アナウンス、ミキサー、電話番である。配置についてからはまた大忙しで、それぞれが準備を3分ほどで整える。ミキサーの人は、放送を流す教室の選択をする。電源を入れ一斉を外し、マグネットで貼られた、放送を流す教室とそのボタンを合っているか照らし合わせるのだ。これが案外厄介で、一つ間違うだけで電話がかかってくる。電話番の人の仕事はそのような対応と、先生から生徒の呼び出しを頼まれたときにメモを取ること。いつでも電話を取れるよう、気を張り詰めていなければならない。役割が無い人は、放送室の窓に貼ってあるクリアファイルに「放送中!」と書いた紙を入れる。それも終わると、席に座り弁当を食べ始める。基本、放送をしている人はその最中には昼食を摂ることが出来ないので、早く食べ終わった人が入れ替わるというスタイルなのだ。やっとのことで放送が始まるも、これもまた鉄の掟で一切の音を出すことは許されない。内容は、皆さんこんにちは。お昼の校内放送の時間ですと始まる。そして日替わりで、漢字テストや全校朝礼のこと、天気が悪ければ下校時に気をつけること等のコメントの後、曲を4曲ほど流していた。
ある日のこと。1曲目の歌詞と曲名をアナウンスし流してホッと一息ついたとき。ミキサーをしていた私にアナウンスをしていたN子が私に話しかけてきた。
「今日の選曲、えらい古いね。菊丸、人生何回目なん?先生らは喜びそうなね。 」
「1回目よ。古かろか?良え曲は、世代を超えるんよ。多分。 」
「菊丸、あんまり古いのかけすぎたらクレームくるけん、ほどほどにせんかいよ! 」
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