放送部は働き者さ。

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弁当を食べながらK子が、言う。実は以前、私の好みで数日懐メロをかけたところ、先生たちからは好評だったが、生徒たちには不評だった。 「うう。分かっとるよう。たまに、よ。たまに。お亡くなりになったとか、そういう時なら良かろ? 」 背もたれを掴んで、体をK子の方へ向ける。しかし、アナウンスのN子に曲の残り時間が、1分のときと30秒のときには伝えなくてはならないため、すぐさまデッキに向き直る。 「1分です。 」 「はい。 」 懐メロが好きなのは、そんなにもいけないことだろうか。自分が生きていなかった時代をいくらか想像出来るコンテンツなのに。もっともっと昔のことなんかは、教科書に載っていないこともあるのに、曲を通して時代を知れるというのはとってもありがたくて素敵なことじゃないだろうか。なんて、心の中で文句を言いながら、デッキに表示される時間を確認する。 「30秒です。 」 「はい。 」 大体曲の終了30秒前には、アナウンスも喋れる様に準備をする。アナウンス文を書いた紙を挟んだ板を持ち、マイクのつまみに手を添える。そうして、曲が終了するとCDを出し、次のCDを入れて頷く。それを見たN子は、つまみを上げ2曲目の歌手名と曲名を言う。その後私がCDのつまみを上げボリュームを上げると、2曲目の曲が始まった。 「1曲目がアレやったけん、2曲目はイケイケ系にした。 」 「ほんなら良え思うよ。 」 N子と言葉少なに会話を終えると、空腹と戦いながら、デッキに表示された曲の残り分数を確認する。すると突然、一斉が入った。 「ありゃ。来たがね。 」 CDを一時停止し、一斉のスイッチを入れる。これは大抵先生が生徒を呼び出すためにする放送なのだが、前述した通り呼び出しの放送を頼まれることがある。どちらかに統一してはくれないだろうか。少し低めの、怒りを含んだ先生の声が止むのを待ち一斉のスイッチを外し、再び曲を再生する。 「全知全能の神(あだ名)。キレとるね。ありゃあ早よ行かな命無くなる。っよし、代わりまーす! 」 弁当を食べ終わったK子が、意味深な台詞を吐いて私たちの背後に立った。 「最初はぐー。じゃんけんぽい! 」 代わると声をかけた人がひとりの時、このようにじゃんけんをして勝った方が交代するようになっている。
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