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「お前全然凡人じゃないけどな。まぁ、でもそうか。シウス様も精霊の声が聞こえるんだっけ? 森の中限定で」
「らしい。だからもしかしたら、リカルドさんも言わないだけで何かしらの力があるのかもしれない。それが悩みだとしたら、俺達では分からない苦しさだと思う」
そう言われたら、なんだか何も言えない。
確かに人と違う事は悩みかもしれないし、凡庸なチェスターでは理解が追いつかない事もある。けれど否定はしないし、理解したいとも思う。時間はかかっても、受け入れたいと思う。
好きになった人なんだから。
「暫く様子見て、よほど苦しそうなら話してみろよ。お前、けっこう聞き上手だろ?」
ランバートに言われて、チェスターは「ん」とだけ気の無い返事をして立ち去る。最後に「根詰めるなよ」とだけ言って部屋に戻った。
部屋は既に暗くて、リカルドは眠っているようだった。
でも、分かっている。眠っている人の気配と、息を殺すようにしている人の気配は違う。漂ってくる感じが違うんだ。
分かっていて、それでもチェスターは知らない振りをした。言いたくないんだと、拒絶を感じたから。
布団に入り横になる。風呂で体を少し揉んできたから、疲労は軽減されている。それでも横になるとあっという間だ。
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