雪原の向こうで(チェスター)

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 登山口に立つと、確かに新雪で道は分かりづらい感じではあるが未踏の地という訳ではなさそう。道は二股で、ウェインは山頂へと向かうルートを進む。片側が崖になっているものの、険しい場所の岩壁にはロープが張られていて登りやすくなっている。  山もそれほど厳しい急斜面などはなく、比較的なだらかな感じだ。おそらく夏なら子供でも楽に登れるのだろう。 「案外ちょろい?」 「そうでもないよ。冬は足元も悪いし、野生の獣も出るからね。この時期にここを登るのはこうした獣を撃つ猟師がほとんどなんだ」 「例えば、どんな獣が出るんですかウェイン様?」 「狼、猪が多いみたい」 「……最悪」  全員が腰につけた剣の意味を痛いほどに理解した瞬間だった。  だが天候に恵まれたこともあり、雪を踏みしめ順調に登っていけた。正午をやや過ぎたくらいに五合目に到着した全員は、開けた場所に思わず声を上げた。 「広い! それに景色がいい!」  それまで文句を言っていたレイバンが嬉しそうな顔をして目の前に広がる景色を楽しんでいる。  五合目には丁度良く広い場所があり、それこそ雪合戦もできそうなくらいの平地だった。 「ここは昨日みたいな雪壁が見当たりませんが」  周囲を見回したゼロスがウェインに確認している。確かに周囲に雪壁はない。  だがここで、ウェインはニヤリと笑いスコップを手にした。 「これで、かまくらを作ります」 「…………え、今から?」 「勿論」 「マジかよ!!」     
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