雪原の向こうで(チェスター)

4/9
前へ
/81ページ
次へ
「今日は夜、降らなければいいんだがな」  ゼロスが不安そうに空を見上げている。  ここ数日、日中は比較的穏やかだが夜になると降り出している。大雪というわけではないが、風に乗って斜めから吹き込んで来る感じがした。  何にしてもとても順調。夕飯は外の焚き火を囲んでワイワイと話し、コンラッドが辛めのスープを振る舞ってくれて「辛い!」だのとガヤガヤした。  訓練というか……遊びに来た感じもしないでもない。当然雪には慣れたし、色々教わる事もあったけれど終始楽しい。  普段もこのくらいガヤガヤと楽しい事ばかりだといいけれど、そうは問屋が卸さないのが現実だ。 「なーんか、このまま王都戻りたくねー」  多少カッカした体を雪に投げ出したドゥーガルドに、全員が笑って「わかるー」と返している。その表情はどこまでも朗らかだった。  けれど、突如響いた遠吠えに場の空気は一気に緊張した。ランバート、ラウル、チェルルが周囲を警戒しながら立ち上がり剣に手をかける。チェスターは真っ先にリカルドの側に寄った。この場で武器を持たないのは、リカルドだけだったから。 「これって」 「狼だ。数がいそうだぞ」     
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

388人が本棚に入れています
本棚に追加