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「今日は夜、降らなければいいんだがな」
ゼロスが不安そうに空を見上げている。
ここ数日、日中は比較的穏やかだが夜になると降り出している。大雪というわけではないが、風に乗って斜めから吹き込んで来る感じがした。
何にしてもとても順調。夕飯は外の焚き火を囲んでワイワイと話し、コンラッドが辛めのスープを振る舞ってくれて「辛い!」だのとガヤガヤした。
訓練というか……遊びに来た感じもしないでもない。当然雪には慣れたし、色々教わる事もあったけれど終始楽しい。
普段もこのくらいガヤガヤと楽しい事ばかりだといいけれど、そうは問屋が卸さないのが現実だ。
「なーんか、このまま王都戻りたくねー」
多少カッカした体を雪に投げ出したドゥーガルドに、全員が笑って「わかるー」と返している。その表情はどこまでも朗らかだった。
けれど、突如響いた遠吠えに場の空気は一気に緊張した。ランバート、ラウル、チェルルが周囲を警戒しながら立ち上がり剣に手をかける。チェスターは真っ先にリカルドの側に寄った。この場で武器を持たないのは、リカルドだけだったから。
「これって」
「狼だ。数がいそうだぞ」
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