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冬枯れの木々の合間、暗闇にランランと光る幾つもの瞳を見つけ、チェスターは身を縮ませる。逞しい四肢で大地を踏みつけるその姿は悠然としていて、明らかにこちらが食われる側だった。
「全員応戦!」
ランバートの声が狼よりも僅かに早く響き、剣を抜いた。そして、狼の牙を退けていく。
流石としか言いようがない。ランバート、ラウル、チェルルは勿論の事、ウェイン、ハリーも足場の悪い雪の中で戦っている。
コンラッドやゼロス、ボリスはそこまで上手く足元が捌けないまでもそもそもの武力がある。レイバンなどは的確な急所狙いだ。
ドゥーガルドはクリフを背にしてむしろ動かず、その場で狼を追い払っている。その影で、クリフも一応は剣を抜いていた。
「リカルド先生、俺の側離れないように」
これでもスキーなどに行かないゼロス達よりは慣れている。ウェインがウィンタースポーツ好きなのもあって、何度か近場に足を運んだ。おかげで今回も動けたのだ。
強者を見る。武器を持つランバート達ではなく、狙いは弱そうなクリフやリカルドだ。チェスターの前にも三頭ほどの狼が牙を剥いて機を窺っている。
ジリジリと間合いを取るうち、焦れたように一匹が前に出た。
「くっ!」
一匹が飛びかかると後は集団だ。爪を引っかけようとしたのを剣で打ち払い、足を狙ったものはそれより先に蹴り飛ばす。立ち回りを始めたチェスターは確実に狼を退けた。
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