ジェームダルへの道

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「私達が暮らしていたのは、宰相閣下よりもずっと奥深く。だからこそ、分かります。森は等しく人に恩恵を与え、等しく死を与える。耐えられなければ死ぬのみです。それは、エルも同じ。寒さに凍えて命を落とす子供は、多くいました」  不安そうなチェスターの声は耳に入っていないようで、リカルドは独り言のように呟く。  ランバートは視線を地図に戻した。東の大森林地帯。馬も使えないこの過酷な環境の中、効率よく突っ切ったとしても五日はかかるだろう。これは夏換算。冬ならばきっと、倍はかかる。  不意に不安も過ぎる。だが、それを口にはしない。正体のないものに心を乱される時間は、きっとないのだから。
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