387人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
雪山初日
あっという間に雪山行きの日、意気揚々とするウェインとは違いレイバンは寒そうにコートの前を握っている。
「信じられない……」
「レイバン遅れるよー」
「どうして皆そんなに平気なのさ!」
不満タラタラというレイバンはそれでも馬を走らせる。
「寒いよね」
「そのわりに余裕そうだよ、クリフ」
「そう? ロッカーナも田舎だったからかな?」
一番最後を行くランバートの隣で、ラウルは苦笑していた。
「大丈夫かな?」
「何が?」
「今日はとりあえずロッジに到着が目的だし、今日の食事は流石に持参だけど……四日間、これでもつかな?」
「持ってもらわないと困るだろ? そういう訓練」
「外泊も、するんだよね?」
「穴掘って泊まるよ」
「レイバン、凍死しなければいいけれどな」
心配そうなラウルの表情は、それでも見守るように温かなものだった。
目的地は王都から十時間程度の山の峰。そこには高床のロッジがあり、風呂は温泉掛け流しという恵まれた場所だ。
外が暗くなる時間に目的のロッジに到着すると、中から一人の青年が顔を出す。大半の者がその人物に最大限の警戒を示した。
「やっとついた。食材の運び込み終わってるよ」
「悪い、チェルル。一人で任せたな」
最初のコメントを投稿しよう!