ある日、ワンコを拾いました

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「瑞樹くん。電話で言ってたのは、この子?」  白衣を来た大柄な男性が、俺が連れてきた子犬を見て険しい顔をする。 「はい。湊先生、ごめんなさい。無理を言って」 「気にしないで。弱っている子は見捨てられないから」  柔らかく笑いかけてきた湊先生は、子犬を受けとると奥の診察室に入って行った。俺も看護師さんから渡されたタオルで身体を拭き、湊先生たちの後を追って診察室に向かった。  ここはバイト先の近くにある小さな動物病院。時間的にはもう閉まっている時間だけど、湊先生は電話があれば夜間でも診察してくれる奇特な人だ。それを知っていた俺は走りながら電話をし、ここにやって来ていた。  湊先生の診察はとても丁寧で的確だ。おまけに野良やなんかの治療や里親探しにも精力的で、病院内の掲示板やHPには里親募集のお知らせが常に貼られている。そんな活動に加え、アスリートのような大柄でがっしりとした体つきでいながら、キュートな笑顔が印象的な湊先生本人の人気もすごく、この動物病院はいつも人と動物で賑わっている。  俺は湊先生に憧れていた。俺は子供の頃から動物が大好きで、大人になったら動物と関わる仕事がしたいと思っていた。獣医師は、その中でもトップクラスに入る憧れの職業だった。けれども、あまり勉強が得意ではなかった俺に獣医師なんて無理な話で、大学卒業後は動物とは全く関係のない会社に就職した。  けど、どうしても夢が忘れられず、俺は正社員として三年勤めた会社を辞め、フリーターとしてペットショップでバイトを始めた。生活を一変させしばらくして湊先生と知り合い仲良くなった俺は、里親を待っている子たちを見るために度々この病院にも寄るようになっていた。
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