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(な、何だ!?)
何者かの邪悪な気配がする。
おかしい。絶対におかしい。
我々クロア家が、どこかの者達に恨みを買う様な行為など、それこそ記憶に無い。
「リト君、様子を見てきてくれるかしら」
僕はその時、偶々リリア様の近くにいた。
「は、はい!」
リリア様の命で、僕は直ぐに動いた。
二階から一階へ降りると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
血塗れになって倒れる屋敷のメイド。
今まさに切り捨てられた庭師。
奴等の一人に足蹴にされている、旦那様の遺体。
そしてそれをやったのは、手に刃物をぎらつかせた複数人の男達。
「お、お前達は何者だ!」
「行け。コイツは俺がヤっとく」
その内、血の様に赤いスーツを来た男が一人その場へ残り、それ以外は他所へと向かった。
言葉通り、男は僕を殺そうとしている様だ。
男の持つ刃物が僕へ迫る。
だが、僕はまだ死ぬ訳にはいかない。
クロア家の今後を見つめ続ける為に、ここでやられる訳にはいかなかった。
相手は僕の事も、今まで斬り捨てて来た非戦闘員だと思ったのだろう。
その攻撃は油断を孕んだ、とても単純な太刀筋だった。
僕はそれをかわし、男の持つ武器を蹴り落とす。
──ごとり。
しかし男もまた戦いのプロだった。
「チッ」
武器をはたき落とされたとなれば、素早い身のこなしで一瞬にして僕から距離を取った。
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