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元々大雨により地面は悪路また悪路の連続だった。
汚泥に足を取られている所に、奴等の放った矢が身体を抉る。
堪らず体制を崩し、しかもその先が崖と来た。
「ウッ、ウワ ア ァァァ ア アァ あ──」
泥塗れになりながら、自分は崖を転がってしまう。
下方へと真っ逆さま。ようやく動きが止まった頃には、身体中から激痛がし始めた。
「いたか?」
「逃すな!」
崖の上から声が訊こえる。
どうやら見失ってくれたらしい。
だが、もう体は動かなかった。
試しに右腕を伸ばそうとすると、腕の組織が内部から破壊されていくかの様な激痛を覚える。
「ぐ……」
奴等の声はしなくなったが、このどしゃ降りだ。
絶え間なく降りしきる雨音と、全ての視界を覆い隠す暗闇が、孤独に震える自分の心を飲み込んで行く。
このまま自分は死ぬのか。
事の真相も知らないまま、存在を誰も認知してくれないまま、自分はここで独り死を迎えて大地の一部となるのか。
嫌だ。死にたくない。寒い。怖い。
助けてくれ。誰か、助けてくれ。
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