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……その時だった。
雨の中聞こえた、水の跳ねた音。
微かに、しかし段々と大きく、ぱしゃりという音がゆっくりとこちらに近付いてくる。
足音が自分の頭の先まで来て、唐突に止まる。
見つかった? もう、駄目なのか?
足音の主が、自分を見下ろしている。筈。
「う゛、ぁ゛……」
何か喋ろうとしたのだが、嗚咽の様な呻き声を発するのがやっとだった。これでは会話など出来ない。
相変わらず体は動かず、視線を上げようとしたら、激痛が増すだけだった。
その人の手が、自分の手に触れる。
暖かい。
確かな温もりが、掌へじわりと広がっていく。
その瞬間、強烈な眠気が襲って来た。
安心感か、もうどうにでもなれと思っているのか、自分でも、よく分からなかった。
「これも、運命か」
次に目が覚めた時、自分は──
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