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そしてリリア様は、思いも寄らない事を僕に言った。
「そうね……昔のリト君に、とても似ていたから、かしら」
リリア様が仰るには、相手の貴族の男とは幼少の頃から面識があったらしく、お互いに文通を続けて、そして結婚をしたのだそうだ。
しかし、その理由には、何か引っかかる所があった。
『昔の僕に似ていたから』。
リリア様は、確かにそう言ったのだ。
「リト君みたいに真っ直ぐな、綺麗な瞳で、私を見つめるの。一目惚れ、かしらね」
一目惚れ。
そんなまさか、とは思った。
しかし似たような思いを、僕も経験している。
でも、僕はその時、抑えきれなかった。
「なら、僕では! 駄目だったのですか!?」
こんな莫迦な台詞を、よく言えたものだ。
一使用人が主人にこの様な感情を抱くなど、分不相応にも程がある。
誰かに聞かれでもしたら、ただでは済まされない。
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