エピソード9 後悔、そして

28/51
前へ
/1248ページ
次へ
僕はその時も、涙を流していた。 「はい……リリア様」 同時に、僕の初恋は終わったのだと理解した。 そして祝福の中で、 ──おぎゃあ、おぎゃあ! リリア様が女の子を出産された。 産婆が女の子を取り上げ、その後の経過も母子ともに健康。 『リラ』と名付けられたその女の子は、リリア様や旦那様の腕の中で、健やかに眠っていた。 僕は改めて決意した。一生を懸けてクロア家に、リリア様、リラ様に仕えるのだと。 新しい命は、新しい使命でもあった。 リリア様はとても幸せそうで、彼女の幸せは、僕にとっても幸せだった。 あの日が来るまでは。 ある日。 屋敷の付近で轟音が鳴った。 何かが爆発する様な、とても耳障りな音だ。 数分の後、轟音はクロア家の敷地内でも発生する様になった。 「奴等」は、最初からこの屋敷を狙っていたのだ。
/1248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加