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奴等が隙を見せている間に、なにやらリリア様が僕に耳打ちをして来た。
「そのまま聞いてちょうだい。お願いがあるの。私が時間を稼ぐから、あなたはリラを連れて逃げなさい」
……その言葉は、衝撃的なものだった。
そんな、そんな事、聞ける訳が無い。
自分が生涯を懸けて守ると決めた方を、見捨てて逃げろだなんて。
「何を仰るんですか! 囮なら僕が引き受けますから……」
僕が必死に活路を開けば、一人、二人くらいなら道連れにする事が出来ると思う。
逃げるなら貴方だ。貴方をみすみす失うくらいなら、僕は命を捨てる覚悟がある。
しかしリリア様は、頑なだった。
「いいえ。彼等の立場になって考えれば分かる事よ。ターゲットの優先順位は、たぶん私。その私が残る事で、あなた達が生き残れる確率は上がるわ」
そうかもしれない。
だけど、だからといって主人を見捨てるなど、僕には出来ない。
「私は諦めたんじゃないわ。あなたとこの子に託すの。未来をね。この子さえ生きていれば、いつか必ずクロア家は再興出来るわ。ねぇお願い、私の最後のわがままよ。いい子だから、聞いて……」
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